香川ゲーム条例の内容の問題点まとめ

香川県ネット・ゲーム依存症対策条例の内容の問題点について、箇条書きでまとめてみました。
条例の本文*1



・科学的根拠がない

ネット・ゲーム依存症は他の依存症と比べて、依存性が高くない。
ゲーム依存の治療や支援が必要な人は、大きく見積もっても3%程度と少数である。
5%程度は自然に治る。
時間制限は依存症の予防にはならない。
韓国では2011年に16歳未満の子供が午前0時から6時までオンラインゲームにアクセスできなくする、シャットダウン制度を実施したが、ほとんど効果がなかった。*2
国も政府として、ゲーム依存症の発症を防ぐためのゲーム時間の制限に係る有効性及び科学的な根拠は承知していない。と発言。*3

条例の前文にWHOがゲーム障害を疾病だと認定したとあるが、ゲーム条例の検討委員会にも呼ばれた、久里浜医療センターの樋口進氏がゴリ押しで認めさせたものであり、エビデンスもなく、まだまだ研究不足である。*4*5*6
また、WHOはStudies suggest that gaming disorder affects only a small proportion of people who engage in digital- or video-gaming activities.(研究によれば、ゲーム症(障害)は、デジタルゲームビデオゲームの活動に携わる人のほんの一部にしか影響しません。)と発言している上に、コロナ禍の中で、#PlayApartTogether(家でゲームをしよう)キャンペーンを始めている。*7*8*9

大山一郎議員はこの依存症の原因のドーパミン量が、最近の研究ではゲームをしたときと覚醒剤を一定量投与したときと同じであるという研究結果まで出てきているわけでございます。と発言しているが、ゲームをやった時のドーパミンの量は、食事をした時に毛が生えた程度で、覚醒剤をやった時とは大きく異なる。*10(18ページ)*11

インターネットやコンピュータゲームの過剰な利用が学力や体力の低下を引き起こすという科学的根拠を示すべきだ、というパブコメの反対意見に対し、


令和元年11月に国立病院機構久里浜医療センターから公表された全国調査結果において、平日のゲームの使用時間が1時間を超えると学業成績の低下が顕著になることや、香川県教育委員会が実施した平成30年度香川県学習状況調査において、スマートフォンなどの
使用時間が1時間を超えると、使用時間が長い児童生徒ほど平均正答率が低い傾向にあるという結果が出ており、インターネットやコンピュータゲームの過剰な利用が学力低下を引き起こす要因になるものであると考えています。
と返答しているが、久里浜医療センターのアンケートは、因果関係が証明されていない。
成績が悪いからこそゲームの使用時間が増えるのかもしれないし、全く別のところに原因がある可能性もある。*12(7ページ)*13*14
香川県学習調査も同様に因果関係が証明されていない。
また、朝食を食べない生徒や、学校の出来事を家の人に話さない生徒、近所の人に挨拶しない生徒など、39項目にも成績が悪い傾向があったが、こちらにはノータッチである。
スマホとゲームのアンケートだけ、恣意的に利用していると言わざるを得ない。
*15*16*17(74ページ)

ゲーム依存を患っている子供の具体的な数は把握しているのか、というパブコメの反対意見に対し、


香川県教育委員会が平成29年に実施した「スマートフォン等の利用に関する調査」において、「ネットに夢中になっていると感じる」「ネットの利用を制限しようとしたがやめられなかった」「使い始めに思ったよりも利用時間が長い」といった項目に多く該当し「ネット依存の傾向にある」と考えられる生徒の割合は、中学生では3.4%、高校生では2.9%となっているという調査結果が出ています。
と返答。*12
しかし、このアンケートで使われているYoung氏のテストは1998年と、20年以上前に作られたものなので、ネット社会が発展した現代に使うのは不適切である。
さらに、このテストが間違いだという論文もある。
そもそも、これはインターネットの依存度のテストなので、ゲーム依存とは無関係である。*18(3ページ)*19*20

子供と保護者との間に愛着が形成されれば、ネット・ゲーム依存症になる可能性が低くなるという科学的根拠があるのか、というパブコメの反対意見に対し、


愛着は、子どもと養育者との間に形成される持続的なきずなであり、それがどれだけ安定したものとして形成されるかが、その後の対人関係の持ち方を左右するだけでなく、不安やストレスにも大きく影響を与えることや、養育者との安定した愛着は、子どものインターネット・ゲーム依存に抑止的な効果があるとの指摘もあることから、インターネット・ゲーム依存に陥るリスクを軽減させるため、乳幼児期からの子どもと保護者との愛着形成の重要性について普及啓発を行うことが重要であると考えています。
と返答。
指摘されたと言っているが、誰から指摘されたのかが書かれていない上、科学的根拠も示されていない。*12(21ページ)

大山一郎議員が


まあ、このこと(森昭雄氏と岡田尊司氏のゲームについての主張)は、えー、まだ、科学的に全体に証明されたことでもありませんし、根拠があるという風に、どこが根拠やと言われたら、今、我々が、んー、いつも勉強したことを、私なりに総合的に判断した結果です、という風に言うしかありませんが、しかし、私はこれは、多分、大きな、その、根拠があると、いう風に自分では思っております。
と発言。*21(57:12~)*22
さらに、ゲーム条例の違憲訴訟を起こしたわたる氏が氏家孝志議員に電話したところ、氏家孝志議員が科学的根拠だけで成り立たないと発言。*23
そもそも、賛成派の議員が科学的根拠を重視していないようである。

・人権侵害

自己決定権、幸福追求権、プライバシー権、教育権の侵害*24*25*26

・公権力が家庭に介入することがおかしい。

・罰則が無くても、社会的な圧力がかかる。

そもそも、罰則がないなら条例を制定する必要性は無く、啓発活動で問題ない。

・11条では香川県だけではなく、県外の事業者にまで条例に協力するよう求めているが、どうやってアクセスしてきたユーザーを香川県民かつ18歳未満だと判断するのか、その具体的な方法に触れていない。*27
固定回線ならIPアドレス香川県からのアクセスだとある程度わかるかもしれないが、それも確実ではないし、モバイル回線だと判別できない。
また、VPNなどでIPアドレスを偽装されれば、判別するのは不可能である。
位置情報で判別する場合は、アクセスするユーザー全員から位置情報を提供してもらわなければならない。
位置情報はプライバシーに関わる大事な個人情報なので、提供することをユーザーに強制すれば、反発されるのは必至である。
また、位置情報もIPアドレス同様偽装可能なので、偽装されれば判別不可能である。
18歳未満かどうかについてはIPアドレスで判別するのは不可能なので、ユーザーに自己申告させるしかないが、それもユーザーが嘘を付けば、判別不可能である。
これでは事業者は条例を守ることが不可能になる。
守ることが不可能なものを条例として定めるのはおかしい。
一応条例を破っても罰則は無いが、条例に違反しているとして、反社会的なイメージがついたり、クレームがきたり、民事訴訟される可能性がある。
事業者がこれらのリスクを恐れ、香川県からのアクセスを全てシャットアウトする可能性がある。
また、フィルタリングシステムを作る場合は、金や時間、人手、労力が必要になるので、事業者に大きな負担がかかる。
もちろん、香川県がこれらを負担することはない。
これでは、事業者がただ損をするだけである。

・立法事実(条例を制定する必要性)がない。

条例の前文にネットとゲームの過剰な利用が国内外で社会問題になっていると書いてあるが、そんな事実はない。*25

・子どもたちのITスキルや、ゲームのスキルが身につかなくなる。

最近ではeスポーツといって、ゲームもスポーツの一つに認められ、それで生計を立てているプロゲーマーもいる。
条例でゲームに対して圧力がかかれば、ゲーマーが育ちにくい環境になる。

・11条2項は、最早依存症とは関係なく、ただの表現規制である。

・ネットとゲームに関わる事業者が香川県に来なくなる可能性がある。

・ゲームエイジ総研の調べだと、条例制定後の香川県の10代のゲームプレイ時間は、条例制定前とほとんど変わらなかった。*28

・ゲームの有用性を無視している。

ADHDの治療にゲームが用いられている。*29

・ネット・ゲーム依存症の定義を、香川県が勝手に決めている。*12(12ページ)



出典元一覧
*1https://www.pref.kagawa.lg.jp/somugakuji/kenpo/2020index/2020/0324gj24.pdf
*2ついに可決…香川県「ネット・ゲーム規制条例」がニセ科学と言える理由(井出 草平) | 現代ビジネス | 講談社(1/7)
*3【urgent!】香川県のネット・ゲーム規制条例、その効力が県外に及ぶ可能性が判明… | 音喜多駿 公式サイト
*4WHO「ゲーム依存」疾病認定までの6年間、舞台裏の記録 | ハフポスト
*5「ネット・ゲームの依存症対策」全国初の条例制定を目指し、専門家交え検討委員会 香川| KSBニュース | KSB瀬戸内海放送
*6「ゲーム障害」は本当に疾病なのか? WHOの認定で巻き起こる論争 | WIRED.jp
*7Gaming disorder
*8ゲーム依存症 - Wikipedia
*9広がる #PlayApartTogether :WHOのゲーム推奨は、「ゲーム=悪」の図式を改めて否定した | WIRED.jp
*10https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kyouginoba/r01/dai2/houkoku.pdf
*11「ゲームと覚醒剤は同じ」大山一郎香川県議 - 井出草平の研究ノート
*12https://www.pref.kagawa.lg.jp/gikai/hodo/pabukome_kekka020317.pdf
*13香川県ネット・ゲーム条例と久里浜医療センター - 井出草平の研究ノート
*14https://www.ncasa-japan.jp/pdf/document15.pdf
*15ここが無根拠、非科学的。スマホやゲームを規制する「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例」を点検 – すまほん!!
*16成績とスマホ利用時間のみをアピールする恣意性 - 井出草平の研究ノート
*17https://www.kec.kagawa-edu.jp/research/gakuryoku_k/h30/h30_gakuryoku_k.pdf
*18https://www.pref.kagawa.lg.jp/content/etc/web/upfiles/wzu34w180207135239_f01.pdf
*19香川県「ゲーム規制条例」パブコメ回答まとめ 依存症の調査に1998年のテストを使用 根拠は「あると考える」と“お気持ち回答”連発 - ねとらぼ
*20中高生ネット依存93万人調査・久里浜医療センター樋口進さん研究に疑問点あり - 井出草平の研究ノート
*21https://www.youtube.com/watch?v=fzHG5CnhIys
*22心禅の会での大山一郎のゲームについての発言書き起こし - とんかつの香川ゲーム条例反対ブログ
*23わたる on Twitter: "先日氏家議員と電話したときに科学的根拠はあるのかを質問したところ科学的根拠だけで成り立たないとの発言をされました。"
*24香川県「ゲームは1日60分」条例、違憲性への懸念 「不当な干渉」「憲法13条に違反」…作花弁護士が指摘 - 弁護士ドットコム
*25「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例」に対する会長声明(R02/05/25) | 香川県弁護士会
*26「ゲームとスマホは一日一時間」を権力で規定?!香川県でトンデモ条例案が進行中… (1/2)
*27藤末 健三 on Twitter: "香川県ネット・ゲーム依存症対策条例素案第11条に規定する「事業者」の範囲について、念のため、うちの秘書が県議会事務局に確認したところ、明確に「県外の事業者も対象となる」と回答がありました。
全国の事業者に影響があることが明確になりましたので、是非ともパブコメをお送りください。… https://t.co/JlD6w6vh9x"

*28香川のゲーム依存症対策条例「効果上がらず」ゲームエイジ調査 - 産経ニュース
*29ゲームが処方される時代、到来。アメリカ食品医薬局の認可がついたビデオゲーム | ギズモード・ジャパン